コラム

保険業法(第309条第1項、第4項関係)改正に伴う保険募集人の「クーリング・オフ」への対応

保険業界における「クーリング・オフ(保険契約者等による保険契約の申込撤回等)」の意思表示については、これまで書面による通知に限定されたものであったが、2022年5月9日施行された保険業法において、電磁的記録による通知が可能となった。

1.電磁的記録とは
「電磁的記録」とは、電子的方式・磁気的方式のほか、人の知覚では認識できない方式で作られる記録をいう。消費者はこれによる通知を行うことで「クーリング・オフ」が可能となる。例としては、電子メール・CD等の記録媒体や保険会社がホームページに設置する解約専用フォーム等が挙げられる。

2.改正の背景
社会全体のあらゆる分野におけるデジタル化の推進の必要性や、新型コロナウィルス感染症への対応において、「クーリング・オフ」の手続き方法の緩和で、顧客保護を拡充を図るためでる。

3.保険募集人に求められる対応
保険募集人において、下記2項目が必要となる。
(1)保険会社によって「クーリング・オフ」の日数、電磁的記録等の対応方法が異なるため、当該保険会社がどのような方法で受付を行うのかを事前に確認したうえで「クーリング・オフ」に関する説明をすること。
(2)現状において、保険会社が電磁的記録による「クーリング・オフ」の受付ができない状態の場合、今後「クーリング・オフ」の受付方法が変更になる可能性があること、及び「クーリング・オフ」を行う際は、保険募集人(代理店)ではなく、当該保険会社へ直接問い合わせをする必要がある説明をすること。
【留意】
ア.1年を超える保険の契約について「クーリング・オフ(電磁的記録を含む)」が適用される。
イ.1年を超えない保険の契約については「クーリング・オフ(電磁的記録を含む)」が適用されない。
(※しかしながら、お客さまへ「適用されない旨の説明」が必要となる。)

4.クーリング・オフが出来ない主な事項(保険業法第309条、保険業法施行令第45条、保険業法施行規則第241条)
保険募集人は「クーリング・オフ」が適用できない場合の内容についても予め把握したうえで、お客さまへ説明する必要があります。
(1)「クーリング・オフに関する書面を受け取った日」若しくは「申込日」のどちらか遅い日からその日を含めて8日を超えた契約(※8日を超える場合でも各社が独自に約款で定める日数があるため要確認)
(2)医師による診査を受けた契約(生命保険)
(3)お客さまが自ら保険料を振り込んだ場合
(4)お客さまが、予め訪問日を通知し、契約目的の訪問である赴旨を明らかにし、保険会社・代理店などの営業所等で申込された契約
(5)法人又は社団・財団法人などが締結した契約
(6)営業又は事業のための契約
(7)自賠責保険などの強制保険
(8)質権が設定された契約
(9)保険金額の中途増額、特約の中途付帯、復活、更新の契約
(10)更改契約(継続契約)(※ただし、更改手続きに時に保険会社が変更になった場合や保険期間、補償内容等を変更した場合は「クーリング・オフ」ができる)
(11)クーリング・オフが可能な期日を過ぎた契約 など

今回は、保険業法改正に伴う「クーリング・オフ」」についてまとめてみた。今後のトラブル・紛争を回避するためにもお客さまへの説明の際、是非とも参考にしていただきたい。
また相次ぐ法改正併せて、保険会社向けの総合的な監督指針、ガイドライン等の改正により、金融庁の新事務年度開始期となる2022年7月以降、保険代理店への調査・ヒアリングが決定している。調査・ヒアリングに備え、外部監査機関(第三者)による外部監査で自社の体制整備のレベルを確認することもひとつといえる。