コラム

乗合代理店の「お客さま情報管理」― これまでの“当たり前”が、いま通用しなくなっている理由 ―

2025年3月のコラム「乗合代理店の情報管理 ─「説明していない」は、もう通用しない」においても、同様のコラムを掲載しました。今回、保険代理店のコンプライアンス意識の低さに警鐘を鳴らすうえでも、違う角度,、表下でもう一度、掲載します。
近年、保険業界において「お客さま情報の取扱い」を巡る問題が、単なる内部管理の課題ではなく、監督・検査上の重大テーマとして扱われる局面が急速に増えています。
とりわけ、乗合代理店における情報管理のあり方は、「従来の慣行」や「善意のサービス対応」が、目的外利用・情報漏えいと評価されかねない状況に置かれています。本コラムでは、LEGALが実際に保険代理店向け研修で解説してきた内容をもとに、今、代理店経営者・管理責任者が直視すべき論点を整理します

■なぜ今、「情報管理」がここまで厳しく問われているのか

背景にあるのは、業界全体で発覚した一連の不適切事案です。
・出向社員による顧客情報の無断提供
・比較見積を理由とした、本人同意のない情報共有
・「慣例」として常態化していた運用の放置
これらを受け、金融庁は情報漏えいと明確に認定し、2025年には一部保険会社に改善命令が発出される事態に至りました。重要なのは、個人情報保護法が新しくなったわけではないという点です。
これまで誤って理解・運用されてきた情報管理の考え方を、業界として「是正・明文化」したことに、本質があります。

■比較見積の前に「同意」が必要という現実

多くの乗合代理店では、満期更改や新規提案の場面で、複数社の見積を提示することが“サービス”として行われてきました。
しかし現在は、見積作成のために保険会社システムへ顧客情報を入力する行為そのものが、情報提供に該当すると整理されています。
つまり、
・見積を作る前に
・どの保険会社に
・どの目的で情報を提供するのか
を説明し、お客さまの理解・同意を得ていなければならないという整理です。
この説明・同意を経ないまま行われる比較見積は、「目的外利用」と判断されるリスクをはらんでいます。

■「してはいけない対応」は、実は多くの保険代理店で行われている

以下が外部監査でよくみられる事例です。
・満期案内前に、別の保険会社システムで見積を作成
・同意を得ずに、複数社の見積書を用意して訪問
・良かれと思い、比較のために他社システムへ情報入力
これらはいずれも、これまで“普通に行われてきた対応”でありながら、現在は明確にNGと整理される行為です

■問われるのは「個人の注意」ではなく「組織としての態勢」

ここで重要なのは、募集人一人ひとりの意識の問題ではないという点です。
金融庁や業界団体が見ているのは、
・ルールが明文化されているか
・全ての募集人に義務付けられているか
・実際に守られているかを点検しているか
・記録・管理ができているか
という、体制整備と運用の実効性です。
「現場任せ」「各自の判断」といった、この状態こそが、最大のリスクになります。

■自社は、本当に説明できる状態にありますか?

・比較見積時の説明内容は統一されていますか
・同意取得の記録は残っていますか
・「提供を希望しない保険会社」の管理はできていますか
・意向把握シートや募集管理規程は、現状に合っていますか

一つでも即答できない項目があれば、体制整備の見直しが必要なサインです。
「うちは大丈夫だろう」ではなく、「説明できるか」という視点で、一度、体制を点検されてみてください。