コラム

今こそ保険代理店のDXを本気で考えるとき

──「紙の安心感」がリスクになる時代に

「DX化って言われても、費用もかかるし、どこまでやればいいのかわからない」
「うちは紙で管理している方が、逆に安心だし効率的だよ」

私たちが保険代理店の外部監査に伺う中で、こうした声を耳にすることは決して珍しくありません。
しかし、ここにこそ保険業界が他業界に比べてDX化の遅れを指摘される根本の課題があります。
今、DX化は単なる「デジタルツールの導入」ではなく、業務の安全性と効率性、そして顧客からの信頼を守るための経営課題に変わっています。

■ DX化が進まない“本当の理由”とは

多くの代理店でDX化が進まない理由は、次のようなものです:

  • 「DX化=IT化」と思い込み、ハードルが高く見えている
  • 現行業務の課題が“見えていない”ため、改善の必要性を感じにくい
  • 紙ベースに対する安心感から、変化を避けている
  • 情報漏えいやセキュリティリスクの想像がついていない

ですが、こうした考え方を放置したままでは、重大なリスクに繋がります。

■ 紙ベースの“安心”がリスクに変わる瞬間

例えば、紙の顧客名簿や申込書をファイルで管理している場合──

  • 紛失や盗難のリスクは“気づいた時には手遅れ”
  • 災害(火災・水害)で一瞬にして消える
  • 関係者以外でも閲覧できてしまう可能性

これらは、電子化されたデータよりもはるかに危険です。
しかも2024年4月の個人情報保護法施行規則改正では、「一定の個人情報」の漏えいでも、報告義務や本人通知義務が生じるようになりました。
「紙で保管していたから情報漏えいではない」は、もはや通用しない時代です。

■ 保険代理店が取り組むべきDX化の具体的な事例

以下は、実際に代理店業務で導入されつつある代表的なDX事例です。難しいシステム開発ではなく、“業務改善”としてのDXに注目してください。

1. 顧客管理(CRM)のデジタル化

  • 顧客情報・契約履歴・対応履歴を一元管理
  • 顧客ごとのニーズや意向履歴を時系列で記録
  • 営業の属人化を防ぎ、誰でも対応可能に

2. 契約進捗・更改管理の自動化

  • 満期アラートの自動通知
  • 契約進捗を「見える化」してチーム全体で共有
  • 案内漏れの防止と作業時間の短縮

3. 電子申込書・電子署名の導入

  • 手書き書類の削減
  • 遠隔地対応や郵送時間の短縮に効果的
  • 顧客の利便性向上と印鑑レス対応

4. チャット・LINE等での顧客対応履歴の保存

  • 顧客とのやりとりをシステムに保存・共有
  • 「言った言わない」トラブルを防止
  • 業務継承・引継ぎの効率化にもつながる

5. 内部監査・点検業務のクラウド管理

  • チェックリスト・報告書・対応記録をオンラインで一元管理
  • 本社・支店・募集人の対応状況を即時に把握
  • 外部監査対応や業務品質評価制度にも有効

■ DX化がもたらす4つの大きなメリット

1. 情報管理のセキュリティ強化

アクセス権限設定・操作履歴の記録・クラウドバックアップで、紙よりも安全に管理できます。

2. 業務効率の向上と人手不足への対応

顧客対応記録、申込書類、帳票管理などが一元化され、重複作業や手書きの手間が激減します。

3. 顧客対応のスピードと質が向上する

顧客からの問い合わせ時に──

  • 契約内容を即時検索・確認
  • 過去の対応履歴や担当者情報もすぐに共有
  • 募集人が不在でも、別の担当者が即対応

手書きよりもシステム入力の方がミスも少なく、更新履歴も残るため、顧客の満足度向上にも直結します。

4. 監査対応・業務品質評価への備え

特に近年注目されているのが、生命保険協会の代理店業務品質評価制度です。この評価制度では、業務のプロセスや記録、コンプライアンス管理が「見える化」されていることが、評価基準の大前提になっています。
そのため、紙ベースの管理体制のままでは、必要な情報を適切に保存・管理・提示できず、認定取得は極めて困難です。逆に言えば、DX化を推進することが、業務品質の可視化=「信頼の証明」につながります。保険業法に基づく体制整備や、代理店業務品質評価制度で求められる「業務の見える化」に直結します。

■ 私たちが提供できるサポート

当社では、保険代理店の実情に即したDX推進に関するアドバイスをさせていただいております。
「何から始めればよいかわからない」・・・その段階からでも、大丈夫ですので、気になる方はお気軽にご相談ください。