コラム

損害保険業界の代理店業務品質評価制度が意味するもの

――評価される時代へ。保険代理店経営の「地盤」が今、問われている

2023年に発覚した保険金不正請求、保険料調整問題――これらを機に、損害保険業界に対する信頼は大きく揺らぎました。業界構造そのものを問う議論が金融庁の有識者会議で交わされ、「顧客本位の業務運営の徹底」が信頼回復と健全な発展の鍵であると明示されています。
こうした中、日本損害保険協会は「代理店業務品質評価制度」の整備に着手し、2025年度トライアル運用、2026年度からの本格運用を見据えて、「代理店業務品質に関する評価指針」を公表しました。
この制度は、単なる形式的な“自己点検”ではありません。 **今後の保険代理店の評価、そして報酬体系にまで直結する「保険代理店経営の新たな地盤検査」**だといっても過言ではありません。

自己点検チェックは“評価基準”であり“対話の土台”でもある

制度の柱となる「自己点検チェック」には、これまで保険会社が保険代理店向けに配布していた形式的な自己点検表とは一線を画す“深さ”があります。
このチェックの本質は、単なる「できている・できていない」の確認ではなく、**業務運営の適切性を自ら検証し、課題を発見し、改善につなげる“主体的・自律的な取組み”**にあります。点検で不備が見つかることはむしろ前向きな出発点であり、そこから改善が行われ、記録されていくことで、PDCAサイクルが実効的に回っている証にもなるのです。
さらにこの自己点検チェックは、損保会社との建設的な「対話」の基礎資料ともなります。損保会社から一方的に評価されるのではなく、保険代理店が記録に基づき意見を発信し、フィードバックの妥当性を確認し、対等な立場での意見交換が成立する仕組みが構想されています。

問われるのは「中身」。外部専門家の力を要する場面も

この自己点検では、顧客情報管理、推奨販売の適正性、社内規程の整備、教育体制、委託先管理など、法令・監督指針を踏まえた具体的で高度な実務対応が求められます。
特に重要項目については記述式での回答が求められるため、何をどのように整備・実行しているかを文章で説明できる体制が不可欠です。つまり、実務そのものが整備されていなければ回答自体が困難であり、場合によっては外部専門家の助力がなければ対応が難しい内容も含まれています。

評価結果は、報酬(手数料ポイント)にも直結

自己点検チェックの結果は、今後、保険代理店の手数料ポイントに反映される仕組みへと接続されていきます。これにより、業務品質を「見える化」し、実質的な体制整備と運用に取り組む保険代理店ほど、報酬面でも反映される方向性が明確に打ち出されています。
逆に、従来型の形式的な運営にとどまり、改善の取組みや記録が不十分な保険代理店は、評価上のリスクが高まり、結果として契約見直しなどの不利益を被る可能性も否定できません。

自己点検は「継続的な改善」と「対話」のサイクル

損害保険協会が示すように、自己点検チェックの重要性は以下の3点に集約されます:
1.主体的・自律的に業務の課題を発見し、改善につなげること
2.単なる点検にとどまらず、改善措置と効果検証を通じて前向きに品質を高めること
3.その記録を損保会社との「対話」に活かし、相互理解と建設的な協働関係を築くこと
特に3点目の「対話」は、業界全体の業務水準向上にも直結します。好取組事例の共有や、各社の工夫が広がることで、社会からの信頼回復に向けた本質的な動きとなるのです。

当社は“実行支援型”で保険代理店をサポートしています

私たちは、保険代理店向けの顧問業務サービスを通じて、体制整備や自己点検対応を支援しています。
顧問契約代理店には、評価制度対応に必要な記述回答の雛形、社内規程等、管理者検証資料、募集ルール等を無償提供(定額制・スタンダードプラン契約者限定)しており、制度導入の波を先取りし、万全の備えを整えていただいています。
「何から手をつければ良いかわからない」 「一部は整備しているが、評価に耐えられるか不安」
――そんなお悩みをお持ちの方も、ぜひお気軽にお問い合わせください。
制度は待ってくれませんが、備えは早いほど確実です。
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