2025年5月、改正保険業法が国会で成立し、2026年4月〜5月頃に施行される見込みとなりました。保険代理店の業務運営や委託の在り方にも直接的な影響を与える見通しです。
さらに、乗合代理店に対する業務管理責任の明確化が大きな柱とされており、特に「比較推奨販売」の適正な実施体制が、今後の委託継続・再委託判断に直結すると言われています。 この法改正の施行時期を見据え、すでに保険会社は水面下で中小保険代理店の統合や委託見直しに向けた動きを本格化させており、地方の小規模保険代理店にとって“静かな淘汰”の始まりとも言える状況が進行しています。
■なぜ、中小の保険代理店が”整理対象”となるのか
中小代理店、特に従業員数5名以下の個人・家族経営型の保険代理店は、保険会社にとって以下の理由から「委託リスクが高い」と判断されやすい状況にあります。
●体制整備に時間も人材も割けない
・内部規程や記録類の整備が遅れ、保険会社からの要請にも後手に回りやすい。
●募集品質の平準化が難しい
・比較推奨販売や意向把握に関するルールが属人的で、統一した説明・記録が困難。
●管理者が名ばかりで実務を兼務
・管理と販売を一人で担っており、実質的な監督機能が果たされていないケースが多い。
●エビデンス文化の未浸透
・書面・音声・システムによる記録が整っておらず、説明責任や検証に耐えられない。
●監査・外部点検がなく“放置状態”
・外部のチェックが入らないことで、保険会社側の不安材料になりやすい。
保険会社にとって、「問題を起こさない、事務負担が少ない、管理しやすい保険代理店」が今後の委託対象です。逆に言えば、そうでない保険代理店は静かに“委託の見直し”対象になっていくのです。
■実際に起きている「廃業・委託解除・合併」の事例(2024~2025年)
▶ 事例①:【北陸地方60代後半の保険代理店(店主+パート1名)】
・単独経営者が引退を決断 → 地元大手代理店に吸収合併
後継者不在で、高齢化。保険会社が早期に打診し、統合を提案。本人も体調に不安を抱えていたことから、廃業と同時に契約は他代理店へ引継ぎ。
▶ 事例②:【関東郊外50代後半の保険代理店(店主+従業員3名)】
・乗合代理店が比較推奨販売の不備を理由に主要保険会社から委託解除
「意向把握の記録が不十分」「説明内容がずさん」との理由で1社から契約打ち切り。その後、他社からも委託解除が続き、事業継続困難に。
▶ 事例③:【中国地方60代前半の保険代理連(夫婦経営)】
・2名体制の家族経営代理店が営業継続を断念
夫婦2人で20年以上経営していたが、売上の低下と記録業務の煩雑さにより限界を迎え、近隣の法人代理店へ契約移転。
▶ 事例④:【北海道地方50代後半の保険代理店(店主単独)】
・帳票保存・苦情対応がずさんだった保険代理店が保険会社の監査で“重大懸念”指摘
複数の苦情が報告されたにもかかわらず、再発防止策や記録整備がされず。再三の改善要請にも応じなかった結果、2社から委託停止勧告を受ける。
▶ 事例⑤:【東北地方50代前半の保険代理店(店主+従業員3名)】
・“地方中心の複数代理店”が事務コスト削減を目的に合併
同じ市町村内で活動していた3つの代理店が、保険会社の指導を受けて自主統合。管理責任者を一本化し、事務体制を効率化して生き残りを模索。
■地方の中小保険代理店が直面する厳しい現実
こうした事例の根底にあるのは、「マンパワーの限界」と「管理機能の未整備」です。
特に、改正保険業法の施行が見込まれる来年春に向けて、保険会社は以下のような基準で保険代理店の“見直し”を進めていくされています。
●コンプライアンスリスク(帳票、意向確認、説明責任)
●顧客対応リスク(苦情管理、苦情対応履歴)
●成果の平準性(高齢顧客偏重や提案の偏り)
●教育・研修・モニタリングの実行度
●外部監査や指導体制の有無
■今、地方中小保険代理店がとるべき具体的なアクション
1.体制整備の“見える化”
2.意向把握、対応履歴(特に比較推奨販売)の記録方法改善
3.外部監査の導入による説明力強化
4.経営統合・業務連携の柔軟な検討
<最後に>
2026年の保険業法施行まで、1年を切りました。
保険会社は、いま水面下で「管理体制が弱い」「成長が見込めない」「記録や証拠が整備されていない」保険代理店を整理・統合の対象とし始めています。
それは突然表面化するのではなく、「委託停止の予兆」「引継ぎ提案」「商品供給制限」など、静かに、確実に進んでいくのです。
生き残るのは、“大きい保険代理店”ではなく、“備えていた保険代理店”です。
しかし、自分の保険代理店が現在どの位置にあるのか、自社の体制整備は“認められる水準”に達しているのかを正確に把握するのは、内部だけでは限界があります。
だからこそ今、外部監査の力を借りて、自社の“立ち位置”を見える化することが、極めて重要な経営判断になります。
ぜひ一度、当社の外部監査を通じて、「このままで良いのか」を冷静に見つめ直す機会としていただければと思います。第三者の視点が、自社の未来を守る「武器」になります。